ガルシア=マルケス『族長の秋』

主人公の名前は語られず、ただ「大統領」とだけ呼ばれている。『族長の秋』は、その大統領の独裁の様子が、延々と描かれた小説である。ガルシア=マルケスと相性がいいのか、翻訳者の鼓直と相性がいいのか分からないが、とにかく楽しい読書体験だった。 まず…

『マルクス・エンゲルス』

映画の『マルクス・エンゲルス』を見た。マルクスの著作は、きちんと読んだことは一度もないし、マルクス主義を標榜した身近な人がうさんくさかったので、なんとなく嫌な目で見ていたけど、少しは知っておこうと思った。 感想は、とてもおもしろかった。マル…

NHK『福島第一原発事故 7つの謎』

NHKスペシャルのシリーズだった『メルトダウン』の取材班による、福島第一原発事故の検証結果であり、NHKの取材力を駆使した優れた取材報告となっていると思う。 原発事故は、情報が錯綜していて、時間が経ってさまざまな検証を経ないと、適切な評価が難しい…

ガルシア=マルケス『百年の孤独』

「マコンド」という町ができてから、滅びるまでの歴史が描かれた小説。最初は原始的な町だったが、それから政治の波が押し寄せ、反乱は紛争、虐殺、資本主義的な経済が町に訪れる。その中で、町の創始者であるブエンディーアの一族がたどっていくとても奇妙…

谷崎潤一郎『卍』

同性愛がテーマで、それを大阪弁で独白体で描くところに、特徴がある小説だと思っていた。けれど、読後の率直な感想は、それとは異なって、同性愛や性的不能者を出すことで、恋愛での嫉妬や猜疑心を、とてもとてもねちっこく描く、一種の恋愛小説だと思った。…

谷崎潤一郎『春琴抄』

谷崎はあまり読んでなくて、以前、ほとんどカタカナの小説を読んだけど、ほとんど記憶がなく、途中で断念したかもしれない。今回、きちんと谷崎の作品を読んだのは初めてかもしれない。 まず、文章が非常に洗練されていると感じた。とても読みやすく、読点の…

サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』

読んでいる最中、ずっと感傷的で、どの章にも、どの場面にも、ぐっとくる描写があった。いわゆる、共感できた小説だと思う。たぶん、学生時代に読めば、もっと酔っていたと思うし、今も精神年齢は大して変わっていないためか、少し読後の感傷に酔っている感…

大江健三郎『万延元年のフットボール』

物語は、頭を赤く塗って、肛門にキュウリを挟んで縊死した友人の話から始まった。なんというか、この最初の掴みにぐっときてしまった。そもそも大江の文体と相性がよいので、楽しく読み進めた。弟の鷹四、妻、そして鷹四の親衛隊と四国に向かって、そこで鷹…

ブレードランナー

作業しながら観たけど、なかなかおもしろかった。 近未来の設定で、「レプリカント」と呼ばれる人造人間が存在する。能力は人間より遙かに優れていて、製造から数年経つと感情が芽生える。ただし、安全装置として、寿命は4年しかない。レプリカントが人間に…

カズオ・イシグロ『私を離さないで』

一人称の語りで、幼年時代の回想から始まる。友人たちとの交流や、ちょっとした出来事が静かに語られていく。ごく普通の幼年時代のようで、どこか違和感を覚えるような話が出てくる。状況設定を最初に明確にするのではなく、少しずつ状況がどのようなものか…