『マルクス・エンゲルス』

映画の『マルクス・エンゲルス』を見た。マルクスの著作は、きちんと読んだことは一度もないし、マルクス主義を標榜した身近な人がうさんくさかったので、なんとなく嫌な目で見ていたけど、少しは知っておこうと思った。

感想は、とてもおもしろかった。マルクス主義の思想の紹介というよりは、その当時、自分たちの理想を目指して生きる若者たちの映画、という感じだった。どこまで史実かは分からないけれど、マルクスは貴族の奥さんと子どもを抱えて、非常に貧しい暮らしをして、エンゲルスは紡績工場かなんかの経営者の息子で、裕福な暮らしをしていた。

マルクスの、どうしようもなく頑固で、自分の理想に生きようとするけれど、それでも自分の家族の生活のために、それ以外の仕事を優先してしまうという人間味あふれるエピソードの場面は、とても興味深かった。その苦しさゆえにこそ、観念遊びではなく、現実の問題を見据える思想を求めていった、と思えてしまう。

また、エンゲルスが、マルクスの思想は面白いけれど、経済学の教養が足りないみたいなコメントをしているのは、2人の関係性の実際を知らないので、なんだかとても面白かった。どうしても、マルクスありきのエンゲルスだけれど、エンゲルスあってのマルクスなんだな、とも思った。

労働者が、その日生きていくことも困難な時代、思想が生きる上で不可欠で、一般の民衆にまで必要とされた時代の雰囲気はまったく分からない。生きた言葉で、本当にその時代を生きるために思想を求める、というのは、どういう感じなんだろう。学生運動は、そのような時代の雰囲気を残していたのだろうか。

絶対にその時代に生まれたかったなんて思わないけれど、なんとなく憧れを抱くような時代描写だった。マルクスの本、読んでみようかと思ったけど、結局映画観た帰りに手に取ることがなかったので、やっぱり縁はないのかな。