中田達也『英単語学習の科学』

語学参考書の中でも英語に関する教材はおそろしく多くて、資格試験ごとにもすごい数の本がある。単語学習に限っても、同レベルの単語帳が何冊もある。

環境が整いすぎて、逆に学習が阻害されるのではないか、と思う。文脈で覚える単語帳、ひたすら音読して覚える方法を指南する単語帳、語呂合わせが載っている単語帳、などなど。

本書は、英単語学習の心理学的知見に特化した本で、非常に興味深かった。勉強になった点を列挙する。

まず、分散学習の重要性はさすがに知っていたけど、復習のタイミングを徐々に広げていくのは、あまり意味がない、ということ。記憶のメカニズムを反映していることを特徴にする単語学習ソフトはいずれも、忘却曲線に基づいて、忘れるタイミングで学習するという形式になっている。以前より、忘却曲線があるのはいいとして、その忘却のタイミングで学習することが最善なのか、というのは疑問だったけど、やっぱり違うみたい。

続いて、例文型の単語帳は増えているけど、これも効果的ではないみたい。もちろん、単語のさまざまな用法等を学ぶには、例文の効果は大きいけど、単に単語の暗記だけを考えるなら、例文の効果はない、と。要は、外国語の学習の場合には、母国語の語彙体系があるから、ある程度それとの対応づけだけで推測できることもあり、あえて単語を例文と一緒に覚える必要はない、ということだと思う。

また、読書を通して単語学習すればよい、というなかなか豪腕な考え方もあるけど、その場合は14回くらいは接しないとダメ、という話。要は、頻度が少ない単語の学習には完全に不向きである。しかし、同系統の記事などを読み込めば、これは意味があるかも。

以上を踏まえて、著者の主張とは言わないけれど、一押しの単語学習の仕方は単語帳。古典的な学習かもだけど、結局これが最強。最も効率的だからね。単語カードって、古くさいけど最強。ただ、発音はやっぱり必要な気がするから、正しい発音と一緒に覚えることも必要だと思う。

至れり尽くせりの英語学習だからこそ、古典的な学習に集中するのも悪くないかも、と思った。やっぱり気合いと根性と単語カードでゴリゴリとやってくのがよい。