2018-01-01から1年間の記事一覧

太宰治『富嶽百景』

たぶん太宰本人の、富士山と関係あるエピソードを綴った随筆。青空文庫に入っているのを、kindleで読んだ。なんか太宰の日常や、彼の気取らない考えなどが淡々と書かれていて、おもしろく読んだ。 佐藤春夫の文章を読んで、太宰を怖れていた青年の話も面白い…

セッション

おそらく世界でも最もレベルの高い音楽学校のジャズバンドが舞台。指揮者のフレッチャーは、バンドメンバーたちを、それはもう罵って、追い詰めるだけ追い詰めて、向上させようとする。そこに、主人公の男の子のニーマンがドラマーとして加わる。正気とは思…

ジェラシック・ワールド

こちらもレイトショーで観た。4DXで観たけど、座席の揺れ方と水の出方が思った以上で、なかなか楽しかった。ただ、VRが出た今、3Dにさえ物足りなさを感じたのも事実。今後、VRで観るということもあるのかな。そんなアトラクションとかあればな。あるのかな。…

インクレディブル・ファミリー

『ミスター・インクレディブル』を観てから、観に行った。まさか、前作の直後からとは思わなかった。前作とどっちが好きかはわからないけど、今作もけっこー面白かった。赤ちゃんの能力すごかったし。 家事が全部できれば、それはスーパーヒーローと同じくら…

ガルシア=マルケス『族長の秋』

主人公の名前は語られず、ただ「大統領」とだけ呼ばれている。『族長の秋』は、その大統領の独裁の様子が、延々と描かれた小説である。ガルシア=マルケスと相性がいいのか、翻訳者の鼓直と相性がいいのか分からないが、とにかく楽しい読書体験だった。 まず…

『マルクス・エンゲルス』

映画の『マルクス・エンゲルス』を見た。マルクスの著作は、きちんと読んだことは一度もないし、マルクス主義を標榜した身近な人がうさんくさかったので、なんとなく嫌な目で見ていたけど、少しは知っておこうと思った。 感想は、とてもおもしろかった。マル…

NHK『福島第一原発事故 7つの謎』

NHKスペシャルのシリーズだった『メルトダウン』の取材班による、福島第一原発事故の検証結果であり、NHKの取材力を駆使した優れた取材報告となっていると思う。 原発事故は、情報が錯綜していて、時間が経ってさまざまな検証を経ないと、適切な評価が難しい…

ガルシア=マルケス『百年の孤独』

「マコンド」という町ができてから、滅びるまでの歴史が描かれた小説。最初は原始的な町だったが、それから政治の波が押し寄せ、反乱は紛争、虐殺、資本主義的な経済が町に訪れる。その中で、町の創始者であるブエンディーアの一族がたどっていくとても奇妙…

谷崎潤一郎『卍』

同性愛がテーマで、それを大阪弁で独白体で描くところに、特徴がある小説だと思っていた。けれど、読後の率直な感想は、それとは異なって、同性愛や性的不能者を出すことで、恋愛での嫉妬や猜疑心を、とてもとてもねちっこく描く、一種の恋愛小説だと思った。…

谷崎潤一郎『春琴抄』

谷崎はあまり読んでなくて、以前、ほとんどカタカナの小説を読んだけど、ほとんど記憶がなく、途中で断念したかもしれない。今回、きちんと谷崎の作品を読んだのは初めてかもしれない。 まず、文章が非常に洗練されていると感じた。とても読みやすく、読点の…

サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』

読んでいる最中、ずっと感傷的で、どの章にも、どの場面にも、ぐっとくる描写があった。いわゆる、共感できた小説だと思う。たぶん、学生時代に読めば、もっと酔っていたと思うし、今も精神年齢は大して変わっていないためか、少し読後の感傷に酔っている感…

大江健三郎『万延元年のフットボール』

物語は、頭を赤く塗って、肛門にキュウリを挟んで縊死した友人の話から始まった。なんというか、この最初の掴みにぐっときてしまった。そもそも大江の文体と相性がよいので、楽しく読み進めた。弟の鷹四、妻、そして鷹四の親衛隊と四国に向かって、そこで鷹…

ブレードランナー

作業しながら観たけど、なかなかおもしろかった。 近未来の設定で、「レプリカント」と呼ばれる人造人間が存在する。能力は人間より遙かに優れていて、製造から数年経つと感情が芽生える。ただし、安全装置として、寿命は4年しかない。レプリカントが人間に…

カズオ・イシグロ『私を離さないで』

一人称の語りで、幼年時代の回想から始まる。友人たちとの交流や、ちょっとした出来事が静かに語られていく。ごく普通の幼年時代のようで、どこか違和感を覚えるような話が出てくる。状況設定を最初に明確にするのではなく、少しずつ状況がどのようなものか…